I Love SAGA! ～佐賀県立図書館の創造と発信～

　こんにちは。

　貴重資料コレクション展の【内容】と【展示資料】について紹介していきます。
　まずは「葉隠聞書」からの紹介です。「葉隠」というと「武士道というは…」という教科書でも取り上げられる有名な言葉がありますが、その他の言葉も紹介しています。

【内容】
□「葉隠聞書」の時代背景と独創性
　田代陣基が山本常朝の草庵を訪れ、「葉隠聞書」がまとめ上げられたのは、今から300年ほど前のことです。すでに徳川幕府も安定し、６代家宣、７代家継そして８代吉宗が将軍となり、戦国の戦乱も遠い昔とのこととなって、人々が太平の世に慣れきった時代でありました。佐賀藩も３代綱茂、４代吉茂が藩主となり、本藩による体制も整えられていました。
　こうした時代の中にあって、戦うことを生業とした武士が、その役割を失い、太平の世のふさわしい武士の新しい生き方と知恵が求められていた時代でもありました。
　「葉隠聞書」が他の武士道論と異なるのは、戦うことを生業とした武士のありのままの姿で、太平の世における生き方と知恵を求めようとしたことにあります。そのことを常朝は、「夜陰の閑談」の中で次のように述べています。
　「御先祖様方の御苦労御慈悲」によって「今が世迄、無雙の御家にて候」
　「国学得心の上にては、餘の道も慰みに承るべき事に候」
　つまり、佐賀藩の成り立ちや伝統（「国学」）の中にこそ、太平の世において国を治め、家を保ち、民を養う武士の新たな生き方と知恵の根本があると考えたのでした。
□「葉隠聞書」の成立と構成
　佐賀藩２代藩主光茂に忠誠を尽くした常朝は、光茂亡き後、出家して金立山の麓（佐賀市金立町金立）、黒土原の朝陽軒に隠棲していました。
　藩主の祐筆役（文書役）をつとめた田代陣基がその常朝を訪ねたのは、宝永７年（1710）３月のことでした。以後、６年半にわたって、陣基は常朝からさまざまな教訓や古人の遺訓、歴史や伝説、実際にあった話、人物評などを聞き、さらに自分自身で調べてことを加えて、享保元年（1716）９月までにまとめあげました。なお、陣基自筆の「葉隠聞書」は所在不明であり、補訂は寛延元年（1748）まで続けられたとも考えられています。
　「葉隠聞書」は、全11巻からなり、「夜陰の閑談」という序文ではじまります。聞書第一・第二は、陣基が常朝から直接聞いた教訓や実際にあった話、聞書第三は佐賀藩祖直茂に関すること、聞書第四は主に初代藩主勝茂に関すること、聞書第五は主に２代藩主光茂、３代藩主綱茂に関すること、聞書第六は「御国古来の事」、聞書第七・第八・第九は「武勇奉公方、御国諸侍の褒貶」、聞書第十は「他家の噂並びに由緒等」、聞書第十一は「前十冊の内に載せざる事その外」となっています。
　つまり、常朝の話をまとめた聞書第一・第二と陣基が独自に編さんした聞書第三以降に大きく分かれています。

【展示資料】
・葉隠（小山本）：文化元(1804)年書写（写した時期がわかる最も古い写本）。「小山信就所持之」とあります。信就（のぶなり）は佐賀藩大組頭でした。
・葉隠（陣内本）：孝白本系。「陣内蔵書」の記入あり。「中野文庫」印。１１巻に「蒲孝白謄写之」「眞俊写」とあります。
・葉隠（天保本）：小山本系。栗原「天保本」。「杉原蔵書」印。「天保十三年(1842)壬寅冬十一月上旬写読之」とあります。
・葉隠（五常本）：五常本系（仁・義・礼・智・信の５巻（冊））。栗原「五常本」。蒲原存。信（５冊目）の末尾に「諸役大意」（後の５代藩主宗茂に対して藩の主な役職の役割と適正、藩主としての心得も説く）等が付載されています。
・葉隠（安政本）：栗原「安政本」。「中野蔵書」書き込みあり、５巻末尾に「安政七(1860)年　中野親明写之」とあります。１１巻末尾に「万延元(1860)年」とある。
・奉公根本（愚見集）：宝永5年(1708)山本常朝が養子吉三郎に書き与えたもので、武士の心得と日常生活の指針を示したものです。「葉隠」と重複するものが多く、「葉隠」口述以前に既に体系化した思想を持っていたことが分かります。
・鍋島茂貞肖像画：鍋島茂貞は佐賀藩家老太田鍋島家初代当主（太田家１５世、太田鍋島家１世）であり、島原の乱における寛永15年の元旦総攻撃で戦死。享年２６歳。茂貞は山本常朝父重澄の寄親で、重澄があまりに張り切りすぎたので茂貞（帯刀）を戦死させたと後に勝茂が評したといわれています。

　

　「葉隠聞書」の展示状況

　＊展示している葉隠、奉公根本は、以下の佐賀県立図書館データベースで全文公開しています。
　http://www.sagakentosyo.jp/hagakure/html/menu.html